YuzoOno.blog

小野裕三の公式ブログです。

『豆の木 21号』 (2017年5月刊)

近づいて消えるみづうみ靴の底  山岸由佳
二階建てバスの二階にゐるおはやう  宮本佳世乃
冬の蜂つつつピアノ練習曲  吉田悦花
山霧や絵本に戻る狐の子  吉野秀彦
秋霖の遠く寂しき鷺の首  鷲巣正徳
門柱を猫の動かぬ小六月  石山昼妥
犬と乗る九月十日の飛行船  上野葉月
蠅帳をかけてわが影入りこむ  大石雄鬼
末黒野を進み農機具ともちがふ  太田うさぎ
納税期艶を増したる爬虫類  岡田由季
学校のない国へゆく雁の列  柏柳明子
冬銀河手錠の冷たさだと思う  片岡秀樹
野に母を沈め琥珀の薄暑かな  川田由美子
男と女混ぜて高きに上りけり  こしのゆみこ
風船の中から土砂降りの河童  近恵
三叉路はむかしのかたち夕時雨  齋藤朝比古
懸垂のぷいとやめたる旱かな  嵯峨根鈴子
探梅や豆腐はたして勤勉か  しまいちろう
蒙古斑たぶん鶯がきてゐる  高橋洋子
みなが霧感じてバドミントン大会  田島健
月を見るおいしい水を飲むように  月野ぽぽな
束で売られるアスパラガスに上と下  中内火星
直角に曲がりウエイトレス霧へ  中嶋憲武
花綵列島ちいさなちいさな老夫婦  夏谷胡桃
夢のごと材木屋ある日永かな  三島ゆかり
霧の窓こちらの本は渇いている  三宅桃子
本閉じる音に消えゆく秋の蜥蜴  室田洋子
春昼や眼科医の顔近すぎる  矢羽野千津子

 身内を褒めるようでいささか気が引けるのだが、それでも、近年の「豆の木」メンバーの活躍は目を見張るものがある。ここに並んだ名前とその実績を挙げれば、それは誰もが同意してくれることだろう。
 しかしそんなことより何より、ここに並んだ俳句は美しいと感じた。なんだかみんな粒が揃っていて、それぞれの粒の色合いや艶はもちろん違うのだけれど、それでもみんなそれぞれの確かな光を放っている。それがこんなふうに一覧にまとまると、まるでお互いに反射し合うようにも見えて、とても美しい。粒が揃っているということは要するに、すべての俳句がある一定レベルをクリアしている、ということにもなるのだろうが、それはそれぞれのメンバーが成熟してきている、ということなのか。
 ただひとつだけ言えるのは、それぞれの句がそれぞれの意味で「的確」であるということ。このグループで共有に掲げる理念があるわけでもなく、かなり作風もばらばらで、つまりそれぞれに独自の世界や方法論を持っている。それでも、それぞれの世界ややり方において、それぞれの句が極めて「的確」である、ということ。つまり、的確に何かを掴んでいる、ということ。その掴んでいる何かはそれぞれまったく異質であるにも関わらず、その的確さ自体が同質であるがゆえに、粒が揃っているという感覚がそこに生じる。しかもその的確さがなんとも肩に力が入っていないのは、やはり成熟したことの証しか。
 気になるのは、この一定の成熟の後に何が訪れるのか、だ。まだまだ、メンバー間の刺激でさらなる進化が起こるのかどうなのか、興味があるし楽しみでもある。